私の好きな人――大爆笑してくれた先輩

長い仕事歴の中で、ああ、この人に出会えて良かったなと思う人がいます。 例えば、女性情報誌「アヴァンティ」の社長の村山さん。 はるかン十年前、私は村山さんと同じ広告代理店で働いていました。私は雑用係として会社に入ったのですが、途中から先輩たちに憧れて無理やり営業職に変えてもらっていました。 村山さんに連れられ、オープンしたばかりのデパートの上から下まで一軒一軒飛び込みしてまわりました。しかしなかなか広告は決まりません。あのビル、このビルと、媒体資料を抱えて上から下までまわりましたが、百軒を超えても、ただのひとつも決まらないのでした。 そんな中、諦め気分で飛び込んだケーキ屋さんから「そっか、じゃ、出そうかな」と言われたのです。耳を疑いました。「だ、出すとは何を!」と訳の分からない質問までしてしまうほどに、驚きました!

村山さんにお礼とともに報告すると、まるで自分のことのように飛び上がって喜んでくれました。 早速、広告作りのためにお客様と打ち合わせをしました。「質の良い卵と牛乳を使っているのが、うちのおいしさの秘密なんだよ」とオーナーはおっしゃいます。 初めての広告作り。 A4の1/6サイズですから、とても小さかったのですが、そこに私は「大切に育てられた鶏さんが産んだ、大切な卵さんと…」のような訳の分からない詩のようなコピーを入れようと思いました。今だったらこんなコピーは絶対に作らないでしょう。地域の広告としては、ぼんやりし過ぎているからです。 村山さんに見せたら、その反応は……。 だ、だ、大爆笑でした! 大笑い。 「あー、こりゃダメだったか」と思ったら、意外にも村山さんの口から出てきた言葉は「見せてごらんよ、お客さんに。お客さんはダメと言うと思う。でも見せてごらんよ」。 は、はい!  手書きの(当時はワープロもありません。一体いくつなんですか!)原稿を持って、お客さんのところに行くと、お客さんはちらっと見て、「これはちょっと…」。あえなく書き直しとなったのでした。 でも、今もあのときの村山さんの反応は忘れられません。 頭ごなしにダメと言わなかった村山さん。 爆笑してくれた村山さん。 「見せてごらんよ」と言ってくれた村山さん。 それから何年間も一緒に仕事をさせてもらって分かったのは、 村山さんの目には特別なフィルターがかかっているということ。 良い事しか気づかないフィルター。 私の悪いところにはいつも大爆笑して、叱ったり一切せずに、良いところだけを見つけて思い切り褒めてくれた。 あんな先輩に出会えたから、今も創造する仕事が楽しくてしょうがないんだと思います。 今は遠く離れているけれど、いつまでもお元気で、村山さん。

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